令和4年度通常総会の開催にあったって

令和4年度東京都技能士会連合会
通常総会の開催にあたって
(挨拶&ミ二講演)
東京都技能土会連合会会長 大関東支夫
通常総会にご参加ご苦労様です。
令和も4年度になりましたが、2年半前に発生したコロナは相変わらず収束の見込みが立っていません。
3年前になりますが、
私は、「政治は40年周期、経済は30年周期で大きな危機、転換点を迎える。
2020年はこの周期が重なる年になり不気味だ。心配している」と申し上げたことがあります。
残念なことに、今、心配していたことが現実のものとなってしまいました。
この2年間、世の中も人も大分変わりました。
これから2年後はもっと違う世界になっているかもしれません。
今日は、少し時間をいただいて、いま感じていることをお話したいと思います。
(世界を覆う3つの危機)
いま世界は大きく3つの危機に脅かされています。
1つは、コロナ禍が収束しないことです。
すでに世界での感染者は5億人を超え、死者は630万人になりました。
本来なら地球上で集団免疫ができて収束に向かって良い時期ですが、
ゼロコロナ対策をとってきた中国や北朝鮮が今頃になって感染拡大しています。
世界の殆どの国が、「コロナと共存せざるを得ない」ということで、
「ウイズコロナ政策」をとってきました。そうした中で、なぜ中国はゼロコロナ政策をとるのか?
それは昔、元から明に変わった時、ペスト(黒死病)が大流行しました。
戦乱とペストで国民の4分の1が死亡したと言われます。
明の皇帝は流行を防ぐために移動制限を強化し鎖国に近い政策「ゼロペスト政策」をとり抑え込みに成功しました。
ペストはヨーロッパに拡散しますが、欧州は「ウイズペスト政策」でした。
感染した国々の国民3分の1がペストで死亡してしまいます。
いま中国は、この明の成功例を重視しました。
「ゼロコロナ政策」こそ「ウイズコロナ政策」に勝るものと信じたのです。
当初は成功したと思われた「ゼロコロナ対策」ですが、今は裏目になっているようです。
理由のーつは、「中国製のワクチンはオミクロン株に効かない」と疑間視されていること。
東南アジアやアフリ力諸国では使用を取りやめているということです。
北朝鮮は人ロ2,600万人のほぼ全員がワクチン未接種です。
栄養状態も悪<感染と重症化率の拡大に歯止めがかからない。
国境封鎖、都市封鎖をして防御しています。
いわば両国の国民がオミクロン株に関しては免疫を持たない状況にあるのです。
不幸なことは、中国も北朝鮮も今更、欧米からのワクチンを受け入れられない。
14億人の人ロを抱える中国が収束しない限り世界のコロナ禍は収束したとは言えないのです。
2つ目の危機は、ロシアがウクライナに侵攻したことにより新たな世界大戦(第三次世界大戦の危機が起きていることです。
2月24日の侵攻当時は、ロシアとウクライナの軍事力の差を考えると72時間(3日)程度で終了すると予想されていました。
しかしウクライナの猛烈な抵抗や欧米の支援により未だに終結の見込みも立っていません。すでに100日を超えています。
今回の戦争で「口シア軍は意外と弱い。戦争下手だ」と言われています。
専門家の分析によると、
@ | 世界一の核保有国ということで自信過剰になり近代的な装備、戦闘訓練がされてこなかった。 中距離ミサイル、航空爆撃機、戦闘ヘリ、戦車、大砲で攻撃しているが、その多くが50年前の旧ソ連時代のもの。 派遣した兵力の3分の1以上の戦力を喪失、兵隊もすでに3万人近く死亡したと推測されている。 |
A | 戦術も旧ソ連時代の方式。IT時代に対応していない。 |
B | 指揮命令も権限移譲していない。上層部に伺いを立てるやり方。情報が集中しているところに必ず指揮官がいる。 そこをピンポイントで狙われる。多くの将軍クラスが死亡している。敗因は兵力の問題ではなく、戦術の問題である。とのこと。 |
日本は憲法第9条で自衛の戦争だけが認められています。「専守防衛」の国です。
今回、ウクライナは徹底した専守防衛で戦っています。 決してロシア領には攻め込まない。武器も攻撃用ではなく供与される携帯ミサイル、ドローン、地雷等で防御しています。 欧米から送られる情報を活用し、攻撃してくる爆撃機やヘリをミサイルで効率的に撃ち落とす。専守防衛の闘いです。
こうした守りに徹した戦いが大きな戦果をあげています。
日本の今後の防衛方法を考えると参考になります。
@ | ビルの地下、地下鉄等を防衛の視点から整備していく |
A | 日本の狭い道路、高層ビル、山岳、河川に適した戦車、兵器、戦術の開発 |
B | 同盟国の強化(米国、英国、ドイツ、豪州) |
戦争は莫大なお金と兵力がかかります。
特に攻撃側は守る側の10倍の戦力、戦費が必要だといわれます。
ロシアは1日200億円以上かかっているそうです。100日で2兆円です。
戦争が長引<につれて財政的に疲弊します。一般会計の予算規模は日本の3分の1程度です。この30%ほどが軍事予算です。
経済制裁を受けていますので戦争が長引くほど苦しくなります。
苦戦するロシアの最後の持ち駒は「核兵器」だけになります。
核というものは脅しには使えますが、使用したときは自国も倍返しを覚悟しなければならず、最後の最後まで使えません。
使ったときから世界大戦となり地球全体が破壊の道に進みます。
では、これからの世界はどうなるのか?この戦争で得をする国はあるのか?
これが分かると、これからの世界が見えてきます。
一つはアメリ力です。
ロシアとの直接対決さえ避けておけば「核の脅威」も欧に比べれば安全圏にあります。
ウクライナに大量の兵器や資金の支援をしていますが米国にとっては大きな負担ではありません。
供給した資金で米国製の武器を買ってくれます。
携帯ミサイルを作るジャベジン社や神風ドローンを作るスイッチブレード社などの軍事産業はフル操業の大盛況です。
株価も暴騰しています。
石油、食糧等資源も豊富にあり値上がりもプラスです。
戦争が長引けば長引くほど第二次大戦後と同様にアメリ力の一人勝ちになるかもしれません。
この際、「ロシアの評判を落とし、経済的にも二度と立ち直れないくらいに衰退させる絶好のチャンス」と思っているかもしれません。
バイデン大統領も「自分の在任中、戦争は終わらないだろう」と発言し、早期解決に介入する気配も感じられません。
もうーつの勝ち組は中国です。
ロシアの孤立化、衰退を横目でみています。
欧米と対立する中国は、孤立するロシアに同調はしていますがトコトン付き合うとは思えません。
信頼関係を感じません。
これからのロシアは外国企業も撤退し大量の失業者が発生します。
国連での常任理事国の地位を確保することも難しくなります。
戦争仕掛人が常任理事国になっていることは許されないのです。
今後は、北朝鮮と同じく核で脅すだけの貧困国になります。
中国の属国のようになって生きていく国になるかもしれません。
中国もロシアを用心棒のように使っていきます。
そして戦後の世界は、米中の対立陣営の形で作られていきます。
3つ目の脅威があります。インフレと食糧危機です。
石油高は何れ止まりますが、問題は食料です。
コロナ禍や戦争の影に隠れていますが、人命の点では戦争以上に深刻です。
日本にいると感じませんが、世界では2億人以上が飢餓状況にあると言われます。
今の食料危機の原因は4つあります。
@ | 紛争によるもの−−コンゴ、アフガニスタン、エチオピア、イエメン |
A | 経済的理由(中米)−−ハイチ、ホンジュラス、グアテマラ |
B | 異常気象(砂漠飛びバッタ、干ばつ)−−ケニア、マダガスカル、スーダン |
C | ロシア、ウクライナ戦争−−小麦、化学肥料等が輸出できない |
(日本に明るい展望はないのか)
暗い話ばかりでしたが、日本に明るい展望はないのか?
一つは円安効果です。
本日、日本円はI ドル133円となっています。昨年の今頃は110円台でした。
世界がインフレ抑制のために金利を上げる中で日本だけはゼロ金利、金融緩和策を続けているため相対的に円の価値が下がっているのです。
本来、金利を上げるのは好景気で物価が上がる時に行われるもの。
今は景気のよくないときに物価の値上がりを抑制するために金利を上げ金融緩和をやめる。
金融政策としては極めて危険な判断です。
資源のない日本は外国から石油や食料を高く買うことになり今の円安は日本にとってマイナス、「悪い円安」と言われています。
しかし輸出企業にとっては大きなプラス要因になります。
特に日本の製造業にとっては競争力が増します。
長い目でみれば日本経済全体でもプラスとなります。
2つ目は海外からのインバウンドの期待です。
日本のコロナ対策は世界的にみても成功したといわれます。外国からの旅行者も拡大してきます。
治安も世界一です。
海外旅行業のアンケート調査でも「コロナ収束後に訪れたい国のトップ」に日本がはいっています。
円安も重なり訪日外国人の増加が期待できます。日本の衣食住工のものづくりにもビジネスチャンスが起きてきます。
3つ目は日本の存在感が見直されていることです。
この2年間で日本の良い面を世界に示すことができました。
コロナ禍でのオリンピック開催が成功、北方領土問題に見切りをつけたように反口シア・ウクライナ支援をした、
インド等中立国を侵攻反対するよう説得した積極外交が評価されています。
いま、NHK大河ドラマ「鎌倉殿と13人」で鎌倉武士が取り上げられています。
その中で武士の基本的心得として、「名こそ惜しめ」「恥ずべきことはするな」ということが語られています。
この考えはその後の日本人が持っている共通の哲学にもなっています。
今のロシアを見ていると、この言葉を投げつけたくなる思いになります。
この「名こそ惜しめ」「恥ずべきことはするな」の考えをもつ日本人こそ世界になくてはならない国民です。
近い将来、「日本という国が地球上にあってよかった」と思われる時が必ず来ると信じています。
私たちはそういう国にしていかなければなりません。
(技能土の世界)
いかなる時代がきても技能士会としてやらなければならないことがあります。
一つは技能継承
二つ目は新技能の開発、時代環境への対応
三つ目は技能士の経済的の地位、社会的地位の向上です。
この2年半余のコロナ禍で技能士の皆さんのご苦労は大変なものがあったと思います。 技能士会としても、少しでも技能士のお役にたてるよう、国や東京都に対してい<つかの要望を続けてきました。 すでにご承知かと思いますが、国に対して
@ | ものづくり庁、技能士庁等の創設 |
A | コロナ禍で仕事の激減した技能士に対する経済支援 |
B | 全技連の特別顧問として堀内のり子衆議院議員に就任頂いたこと |
東京都に対しては
@ | 技能継承のために「匠の技祭典」の継続をお願いしました |
皆様のご苦労からしたら、ささやかな行動かもしれませんが、 「技能士会としてやれることはなんでもやる」という精神で進めていきたいと思います。
これからも難題山積ですが皆さん一致団結して頑張っていきましょう。
長い話になりました。私の退屈な話もこれで終わります。