令和5年度通常総会の開催にあたって

2023.06.08
令和5年度東京都技能士会連合会通常総会挨拶
(一社) 東京都技能士会連合会会長  大関 東支夫

1. コロナ禍に振り回された3年間
 新型コロナに振り回された3年間でした。
 すでに国民の40%以上が新型コロナに感染したそうです。皆さんの中にも感染した方もおられるかと思います。私も2ヶ月ほど前に家族中で感染してしまいました。症状は軽かったのですが今でも後遺症なのか風にあたるとくしゃみが止まりません。甘く見ない方がよさそうです。

 コロナ禍でも日本企業は頑張ってきました。特にものづくり産業が元気です。円安効果もあり自動車、電機、機械といった製造業が中心ですが、上場企業の4分の1以上が史上最高の利益をあげています。お陰で東京都の税収も好調です。

 世界の株価が低迷する中で日本の株価だけは上昇を続けています。世界の投資家が、「中国から日本」へと投資先を移しています。

 この元気な日本の株価も年末までには下がると言うのが私の予測です。
 理由は簡単です。欧米では高騰した物価を下げるために金利を上げています。ケインズ以来の古典的な経済政策で景気が過熱した時には当てはまる理論です。
 今回の物価高の原因はコロナと戦争により流通経路が途絶えたことによるものです。私には的外れにしか思えません。景気がさほど良いとは思えない中で金利を上げていたらまもなく深刻な不況になります。失業者の津波がやってきます。慌てて金利を下げてきます。すると「円相場は上がり、株は下がる」のです。

 私は、新年のあいさつで、「今年の10大予測」を申し上げまた。1年の半分近く過ぎたこの段階で点検すると面白いことが分かります。気になることだけ申し上げます。細かいことは「会報やHP」読んでいただきたいと思います。

2. 「今年の10大予測」の中間チェック
@コロナ収束は中国の動向次第と申し上げました。
 中国は昨年12月に、「ゼロコロナ政策」を急転換しました。いまは、「全員コロナ政策」といわれるくらいに感染者が爆発的に増えました。中国疫病予防コントロールセンターが4月に出した報告では、2月上旬までのわずか1か月の間に人口の82.4%の約11億人(総人口14億人)が感染したそうです。
 その後のデータを発表していませんが、専門家の予測では、今年6月末に二度目のピークを迎え、「週に6,500万人に達する」そうです。1日1,000万人の感染です。
 感染の第一波が1月に一斉にきてから5ヶ月がたち、抗体の力が落ちたため、また、一気に第2波が来るというのです。いまでも北京の病院では4〜6時間待ちの状態。新型ウイルスの型によってはこれから警戒が注意です。

Aウクライナでの戦争は長引きます
 ロシア、ウクライナとも兵器を他国依存するなかで消耗戦が続いています。
 しかし両国とも二度の冬を越したくないというのが本音だと思います。停戦に入る可能性が高いと思われます。停戦協定を有利にするためこれから数か月は激しい戦いが続きそうです。
 そして停戦に入りますが、ロシアは世界から敗戦国扱いを受けます。
 ウクライナへの賠償責任を求められ、更なる過酷な経済制裁が課せられ、プーチン逮捕・裁判要求もあります。ゼレンスキーさんは世界各地を飛び回っていますが、プーチン大統領は国内ですら姿をみせられません。どちらが勝者か明らかです。これからも多くの国がロシアと付き合ってくれません。
 ロシア内部でも紛争が起きてきます。孤立したプーチン政権は核使用を現実化させてきます。一度でも使えば第三次世界大戦となりです。

B世界規模での不況が到来します
 欧米諸国は物価高騰を抑えるために金利を引き上げていますが、物価高騰の原因はコロナと戦争で流通経路が途絶えたことです。石油や小麦の流通経路を確保することを優先すべきでした。しかし、「物価を下げるには金利を上げる」という古典的な経済政策をとっています。的外れです。これから世界不況がやってきます。不況が身近に感じた時の政策転換では遅いのです。

C食糧危機が始まります
 戦争により小麦生産国のロシア、ウクライナの作付面積が激減しています。併せて両国は化学肥料の輸出国ですが生産も輸出も途絶えています。今年末には食糧危機がきます。両国の食料、肥料に頼るアフリカ諸国は深刻です。世界人口の40%近くをアフリカ諸国が占めています。
 救いは日本の商社はしっかりしていますので、他国ほど深刻にはならないと考えています。

D世界の陣営が二分化されていきます
 戦争危機に備えて世界陣営が「欧米日」対「露中北朝鮮イラン」と二分化・二極化していきます。グローバルサウスといわれる振興・途上国のインド、インドネシア、ベトナム、アフリカ諸国等の囲い込みが始まっています。

E世界の政治的リーダーが変わっていきます
 アメリカ、ロシアは来年選挙です。日本は今年7月以降に解散選挙があると予想されています。混迷の時代には勇ましい強いリーダーの待望が出てきます。かってのヒトラーのような独裁者が誕生する恐れがあります。

F中国の混乱が始まっています
 ゼロコロナ政策による、「失われた3年」の取り戻しやウクライナ戦争の影響があります。ロシア寄りを嫌い各国の部品供給網が脱中国、海外資金が流出しています。対中規制も強化されています。株安、人民元安が起きて景気回復が鈍化しています。大学卒業生の4人に1人が失業者になっています。
 医療崩壊、不動産バブル崩壊、デフレ、60歳定年問題も深刻です。

G日本は不況下の物価高・金利高・株高になります
 金融緩和の続く日本はしばらく円安が続くので輸入品価格は下がらないと思います。賃金も上がります。欧米同様、「強欲インフレ」と言われる便乗値上げも起きています。このため物価高は当分続きます。
 金利も世界的金利上昇の流れには逆らえず少しずつ上昇していきます。
 株は日銀と年金機構が大株主です。下がったら国家・国民の一大事です。今は世界の投資家が日本株に向かっているので急には下がりません。ただし年末には株安になるとみています。

H日本の国際的重要性が高まります
 先日、広島でG7が開催されました。日本国内での評価はマチマチですが、世界からは、「主要国をとりまとめ、ウクライナ大統領を招き、インド・ベトナム等グローバルサウス諸国の囲い込みに努力した」日本の力を高く評価する声が聞こえます。
 G7国を始め新興国の多くの国が、これから付き合いを深めたいと思う国のトップに日本を上げています。
 常任理事国のロシアが戦争を始めたことで国連が機能しなくなりました。本来、常任理事国は世界平和維持の為に尽くさなければなりません。それが他国を侵略し、ダムを破壊し、子供たちを拉致する。これを止めなければならない国が拒否権をつかう。とても国連ではありません。常任理事国に日本、ドイツ、インド等が加わる道もでてくるかもしれません。新しい日本の国際的役割です。

Iものづくりの重要性が再認識される
 これからの混迷する時代になればなるほど、「ものづくりの重要性」が高まります。その土台を支えるのが皆様方「匠の技の人たち」です。
 全国372万人の技能士が健在でいる限り日本はいつでも逞しく立ち上がれます。これからが日本の本当の底力を発揮する時代なのです。いずれにしても、この1年間がどうなっているかを知るのも楽しみでもあります。

3. 技能士会としてやるべきことはやる
 今年も私たち技能士会は、「やるべきこと、やれること」はやっていきます。
 特に技能継承のための事業である、技能五輪、技能グランプリ、匠の技祭典、技能検定等は重要です。コロナも落ち着き、ほとんどの行事が平年度並みに実施されます。
 国、政党、自治体への要望活動もこれまでにも増して重要になってきます。
 特に東技連にとって関連の深い東京都や区市町村への要望・提案が大切になり ます。皆様と一緒に行動していきましょう。
 今日の総会は功労者表彰や多くの議題が予定されています。有意義な総会となりますよう祈念して開会の挨拶とします。