一年の予測は元旦にあり
一般社団法人 東京都技能士会連合会
会長 大関 東支夫
(「一年の予測」は元旦にあり)
「一年の計は元旦にあり」と言います。皆さんはどのような新年をお迎えでしょうか。
私にとって元旦は、この一年がどうなるかを予測する楽しくも大事な日になっています。
一年の予測をするからには判断できる情報が必要となります。判断の材料としているのが、毎年1月1日の日経新聞の特集記事です。
ここに持参しましたが、日本経済を代表する「経営者20人が占う2023年」と題して政治、経済、株価を予想しています。私は16年前、競馬会社の社長に就任した時からこの記事を経営や投資の参考にしていました。
いまは経営者達と自分の認識とのギャップを確認することを楽しみにもしています。
面白いことは、例年、この人達の予想が外れることが多くなっていることです。それだけ経済を予測するのは難しいということです。
昨年の記事を見ますと、ほとんど全員が「株価は年始め3万円弱。年末は3万2千円超える」と予想しています。しかし結果は逆でした。年始め3万円台だった株価は年末には2万5千円台になりました。外れた主原因は、ロシアのウクライナ侵攻ですが、それにしても経営のトップとしては外れすぎです。コロナ禍だったここ数年の予想も結果は逆でした。予想に反して企業利益も税収も史上最高記録を出しています。
今年はどうでしょうか。20人中19人が「年の前半は2万5千円程度、年末には3万円以上になる」と予想しています。この予想を信じたためか年末の株高を期待して今から株が買われているようです。
今年こそこの予想通りになって欲しいと願いますが、私には今年も外れるような気がしてなりません。私の素人判断で恐縮ですが、元旦に感じた予測は厳しい結論ばかりでした。参考までに皆様のお手元にお配りしてあります。この場で細かい説明をしていると1時間以上かかりますので省略しますが、後ほどHPや会報に掲載しますのでご覧いただけると幸いです。
(考えられる「10の予測」)→詳細はHP・会報に掲載。
1,コロナ収束は中国の動向次第
日本での感染者は約3,200万人。4人に1人がかかったことになります。
ワクチン接種者も1回以上の接種者は9割を超えています。4回目以上の接種者も5,000万人を超えました。60歳以下の死者はほぼゼロになっています。集団免疫もできてきています。政府も春にはインフルエンザ同様の扱いにするようです。
問題はこれまでゼロコロナ政策をとってきた中国です。突然、ウイズコロナ政策に変えたことで大混乱しています。感染者は11億人に急拡大したと言われています。
日本の挨拶は、「良いお天気ですね」と言いますが、中国では「アサメシ食べましたか」と挨拶するのが慣例です。それが最近は「コロナにかかりましたか」という挨拶に変わったそうです。
その中国では今月22日の春節前後40日間に延べ20億人が国の内外に大移動しています。日本にも観光客が訪れていますがお目当ては買い物、それも日本の風邪薬だそうです。銀座、上野、浅草の薬屋では大量に買われています。店には、「一人2個まで」と表示しています。日本の経済効果は大きいですが世界的なコロナ拡散の心配もあります。
中国のワクチンが効かないという話もあります。欧米からワクチン提供の話もありますが頑なに拒否しています。国のメンツにこだわり感染拡大が抑えきれない場合は国民の不満が爆発し、「天安門事件」の再発になりかねません。14億人の人口を抱える中国が集団免疫を確保できるまでは世界で収束したとは言えないのです。
2,ウクライナでの戦争は長引く
不幸なことですが長引きそうです。両国とも兵器・武器弾薬を他国に依存しなければ戦争継続できないなかで消耗戦を続けています。憎しみと不信感の重なった両国同士では停戦ができないのです。トルコが仲裁に入ろうとしていますが相手にしてくれません。
ロシアは停戦前に優位に立とうとして占領地拡大に入っていますし、ウクライナは欧米の更なる支援を受けて奪われた領土奪還に全力を挙げています。米国、中国がその気になれば仲裁に入ると思いますが、いまはロシアが弱るのを待っている段階のように思われます。
3,世界規模での不況が到来する
いま多くの先進国が物価高騰を抑えるために金利を上げています。本来、金利は景気が過熱した時に上げるもの。経済が停滞している中で金利を上げていけば企業倒産、失業者増加につながります。物価高騰の原因はコロナと戦争により流通経路が途絶えたことによるものです。国連等による流通経路の確保や産油国への増産要請、備蓄している原油や小麦の放出をすることが先決のはずです。
私には、今回の金融政策は的外れの政策にしか思えないのです。悪い兆候もみえます。
米国のマイクロソフト、アマゾン、アルファベット、メタ等巨大企業やモルガン等金融界では何万人もの人員削減が行われてきています。これから世界的に失業の津波が起きてきます。
4,経済的弱者の食糧危機が始まる
小麦、大豆、トウモロコシ等が値上がりしています。いまは高くてもお金を出せば手にはいります。深刻なのは今秋の収穫期からです。戦争が長引くことでウクライナやロシアの穀物収穫は激減します。厄介なのは両国が最大の肥料生産国であることです。
化学肥料の三大要素のうち、カリウムとリンはカリウム鉱石を有するロシアとベラルーシで世界の生産量の4割を占めています。もう一つの窒素製造には大量の燃料が必要です。天然ガスや原油が高騰したため食料のトウモロコシを原料としたエタノールが使われています。肥料不足は来年の作物生産に大きく影響してきます。
最も影響を受けるのが40億人を抱えるアフリカ諸国です。世界人口は80億人ですから、その半数です。アフリカは穀物危機に弱い構造になっています。穀物を作るよりもコーヒー、カカオ、花など付加価値の高い商品作物の栽培が多いのです。爆発的に人口が増えていますが穀物の海外依存体質は変わらず輸入は増えるばかりです。穀物の急騰で財政は破綻状態です。
環境変動による干ばつも深刻です。毎年2回来ていた雨期が5期連続(2年半)で来ていません。ソマリア、ケニア、エチオピア等アフリカ北東部は過去40年で最悪の事態です。家畜や野生の像も餓死しています。政情不安もあり救援物資も届けられません。
5,世界の陣営が二分化されていく
ロシアの軍事侵攻により世界は軍事面も経済活動も「欧・米・日」対「露・中国・北朝鮮・イラン」の両陣営に分かれてきました。中間にあるインド、アフリカ、東南アジア、イスラム諸国は両陣営からの強烈な囲い込みにあってきます。
両陣営の軍事費も拡大しています。日本の軍事予算もGDP1%枠から2%に増額します。世界第3位の軍事大国になります。軍事費の拡大は国家間の格差、国民の格差を拡大していきます。
経済市場も分断されます。半導体等電子機器は兵器にも使用されるため厳格な市場区分けとなります。原油や食料も同じです。どちらの陣営に入るかで国民も影響を受けます。食糧危機、環境破壊、医療格差は生命に係わる問題になります。市場は両陣営内だけの取引になるため本格的な経済復興は遠のいていきます。
6,世界の政治的リーダーが変わっていく
今の時代は戦争とスペイン風邪が重なった第一次世界大戦当時と似ているといわれます。第一次大戦のあとに起きたのは、大失業、食糧不足、環境破壊でした。世の中は不満と不安に充ち溢れていたため強いリーダーが求められました。現れたのがヒトラー、ムッソリーニ、スターリンという独裁者です。そして第二次大戦が始まるのです。
今回も同じようなことが起きる恐れがあります。米国、ロシアは2年後に選挙です。日本も恐らく5月のG7開催後に選挙になります。不動といわれる中国ですがコロナや経済対応で足元が揺らいできます。願うことは地球を破滅させるようなリーダーが誕生しないことです。
7, 中国の大混乱はこれから始まる
- @ ゼロコロナ政策による「失われた3年」の影響がこれから始まります。
3年間のコロナ禍で多くの企業、商店が廃業しました。各国の部品供給網が脱中国化しています。 - A 200兆円といわれるゼロコロナ産業(検査キット、防疫要因等)がなくなり多くの失業者が発生しています。
- B アリババを始めとするIT業界や成長産業を締め付けた弊害がおきています。経済のけん引役をする意欲がなくなりました。中国の大学卒の就職難は深刻です。
- C コロナ禍で2,000を超える民間病院が倒産しました。公立病院は長蛇の列です。ウイズコロナに変更した途端、感染者も死者も爆発的に増え医療崩壊になっています。そして火葬場には順番待ちの車が列をなしています。国民の不満が蓄積されています。
- D 不動産バブルが崩壊。コロナ禍で医療にかける準備が必要だと考える国民が増えています。国民の消費意欲は低下し貯蓄性向が強まっています。
- E 人口が61年ぶりに減少。今後10年間で働き手は9%減少するそうです。低賃金労働力は激減し、中国に工場を持つ魅力がなくなります。
- F 60歳定年制です。既に国民の20%が超え年金も巨額になりました。積立金は35年までに枯渇します。社会主義国家の責任が果たせなくなれば国家崩壊の危機です。
- G 食料問題も無視できません。中国の歴史をみると国民が飢餓を迎えたときに革命がおきて皇帝が変わっています。14億人国民の食の安定維持は国家存亡の問題です。
- H 若者の政権離れが広がっています。就職難、自由度に不満が出ています。若者を引きとめるため、政府の新年メッセージも昨年の「台湾統一」から「中国の発展は若者にかかっている」とする激励文に変わっています。
- I ロシアのウクライナ侵攻でロシア寄りの中国離れが進んでいます。海外企業の撤退が加速しています。中国は孤立化を避けなければなりません。台湾侵攻など計画している余裕はないはずです。
抑えられてきた国民の不満がいつ爆発するのかも心配です。中国政府がこれらの諸課題にどれだけ適切に対応できるか、私たちも注目していく必要があります。
8,日本は不況下の物価高・金利高・株高になる
日本だけが金融緩和を続けてきたことで円安が起きています。原油、小麦等輸入品が高騰しました。20兆円近い貿易赤字もでています。一方で製造業等輸出企業は史上最高の利益を上げています。功罪ありますが、私には「神風」が吹いていると感じています。日本は他国に比べれば安定した経済状況になりそうです。
しかし、欧米や中国が不況に入るとなれば日本だけが好景気になると予想するのは無理があります。異なるのは、不況下の物価高、株高になることです。一度上昇した物価は簡単に下がりません。給与も上がってきますのでコストに転嫁されます。緩やかなインフレが続くと考えるべきです。金利も他国に引きずられて少しずつ上がります。
上場企業の株は日銀と年金機構が大株主になっています。暴落したら国家の危機になります。4月に日銀総裁が変わっても株を下げない政策をとらざるを得ません。
国民はインフレ対応、資産管理策として株を買うことになります。「日本株は比較的底堅い」と感じられれば外国人投資家も日本株を買ってきます。
9,日本の国際的重要性が高まる
欧州NATO陣の影響力が低下しています。単独では行動できない国ばかりになってきました。そうした中で日本の国際貢献が増加しています。日本の国際的重要性が認識されてきました。日本の軍事予算が拡大していきます。世界第3位の軍事大国になります。
日本の軍事拡大を憂慮する人もいますが世界情勢が変わったのです。ケネディ元米大統領が言うように、「戦争の準備をすることによってのみ平和を維持することができる」のです。機能しなくなった国連改革のため日本やドイツが常任理事国に推薦される時代がくるかもしれません。
その場合、日本は恐れられる国になるのではなく、世界平和のために「尊敬される国」にならなければなりません。
10,ものづくりの重要性が再認識される
世界が混乱すればするほど自国の産業が重視されてきます。産業の基本は「ものづくり」です。歴史的にも「ものづくり」が国を救っています。日本には衣食住工の手技を中心とした匠の技を持つ技能士がいます。円安効果で海外からの観光客も増加してきました。日本製品が見直されます。これからが日本の本当の底力を発揮するときです。輝いていた昭和時代の再来も可能です。
以上はあくまで私が元旦に感じた今年の予測です。
外れて欲しい予測がたくさんあります。来年の今頃どうなっているか。恐らく私は大恥をかいているかもしれません。私にとってその方がはるかに嬉しいことです。
今年も多難な年に変わりありません。
私たち技能士会はこれまで何度も難題を乗り越えてきました。コロナ禍においても地道にコツコツと技能継承に努めてきました。技能五輪やグランプリに参加する選手の成績もレベル落ちしていません。今年も匠の技祭典、各種イベントを通して技能継承にも力を入れていきます。
また会員の福利厚生にも力を入れていきたいと思います。すでに葬儀関連を扱うセレモアや観劇を楽しむ明治座と特約契約しました。さらに今後は会員の保険関連の充実策につても取り組んでいきたいと思います。「自分たちのことは自分たちで守る」。そうした東技連にしていきましょう。
皆さん、明るい夢を持って元気に楽しくこの一年を乗り切りましょう。
ありがとうございました。