令和6年度東京都技能士会連合会通常総会挨拶



一般社団法人 東京都技能士会連合会
会 長  大 関 東支夫



 お忙しい中のご参加大変ご苦労様です。
 ただいま昨年亡くなられた高島なおきさんに対し黙とうが捧げられました。この会には毎年、高島特別顧問が出席していますが今年は姿がみえません。
 人というのは、「いなくなってその人の存在の大きさがわかる」と言いますが、技能士会にとりまして偉大な方を失い痛恨の極みです。
 高島さんとは和裁技能士会の相談役就任を頼みに行った時が最初でした。私と小関さん、杉本さんとで北千住の事務所に伺ったことを思いだします。
 その時、高島さんは都議会議員を落選しておりました。私たちの依頼に高島さんは、「私でよいのですか」と遠慮がちに応えました。
 私から「高島さん、活躍するのはこれからではないですか。私たちは金はないが票はある。一緒にやりましょう」と申し上げました。心なしか高島さんの目が潤んでいるように感じました。
 その直後の選挙でトップ当選。都議会議長に就任。東技連の特別顧問にも就任していただきました。ご存じのように、「匠の技祭典」実現をはじめ多くの支援をいただきました。
 改めて感謝を申し上げご冥福をお祈りします。

 ところでいま世界をみてみると、3つの不安を抱えているように思います。
 一つは国際不安です。
(1) 二つの戦争が長引いています。 ウクライナもガザも原型をとどめないくらい破壊され、多くの女性や子供たちまで犠牲になっています。停戦を模索しているようにも見えますが戦いは激しくなるばかりです。ただ世界から孤立していくロシアやイスラエルは、アメリカの大統領選挙前後には停戦に向かうように思います。予測不能の大統領が誕生する可能性があるからです。
 参加者の方から、「会長の取越し苦労だ」と笑い声も聴かれました。不幸にも新型コロナが蔓延しオリンピックは1年延期。そして1年後にロシアがウクライナに進攻。その後、異常な物価高という三重苦が始まりました。悪い歴史は繰り返されるようです。これからが心配です。

(2) 世界の陣営が二極化しています。 ロシアのウクライナ侵攻で政治的、経済的に米国、欧州、カナダ、豪州、日本、韓国といった自由陣営とロシア、中国、北朝鮮、イランといった非民主陣営に二極化してきました。
 この中間にあるインド、アフリカ、東南アジア、イスラム諸国は各陣営から囲い込みに会います。これまでのようなあいまいな態度がとれなくなります。どちらの陣営に入るかで防衛、経済、エネルギー、食料、医療等に影響が出てきます。

(3) 世界の政治的リーダーが変わっていきます。 今日はイタリアで先進7か国サミットが行われています。議長国順にフランス、アメリカ、イギリス、ドイツ、日本、イタリア、カナダ及び欧州連合(EU)首脳が参加しています。
 考えてみますと、この中で来年も在籍していると思えるのは選挙のないイタリアだけです。他は再選の難しい状況にあります。その後はどういう世界が待っているのか。
 こういう混迷の時代になると、世界中が強力なリーダーを求めていきます。どの国も右傾化していきます。特徴は愛国心を掲げ、自国優先、自国ファーストのリーダーが誕生です。
 そうなるとウクライナやガザの支援もなくなっていきます。難民受け入れもなくなります。停戦は早まりますが侵略した土地に居座ることになります。強いもの勝ちの世界です。台湾問題も現実化します。
 アメリカ、ロシア、中国の大国はトランプ、プーチン、習近平といった強力なリーダーで指導されていく可能性も考えられます。困るのは、対立することではなく3人が仲良くなって大国有利なスクラムを組まれることです。ありえない想定ではなく覚悟しておく必要があります。

 二つ目は世界の経済不安です。
(1) 世界規模での不況到来の心配です。
 いま世界中で物価高が続いています。各国がインフレ抑制のため金利を上げる政策をとっています。
いまの物価高の原因はコロナ禍と戦争により石油、小麦、大豆等の流通経路が途絶えたことです。景気の過熱している時に金利を上げることは有効な政策ですが、いまアメリカを除くと景気が良いとは思えません。すでに米国でも求人件数は2021年2月 以来の低水準となり、実質可処分所得は50%割れ、国民総生産は4%→1.8%に縮小しています。
 市場は米経済を過信しているように思えてなりません。景気は気が付いた時では遅いのです。
(2) 中国経済が混乱していきます。
 14億の人口を抱える中国の経済混乱は深刻です。世界経済に大きく影響してきます。
 長引いたコロナ禍とロシア寄りの中国に対し部品供給網が中国から離れています。海外資金も流出し、人民元も暴落しています。半導体等の対中規制が強化され工場の生産も止まりました。大量の大卒失業者も発生しています。大学卒業==大学失業です。60歳定年問題も解決せず年金崩壊も近づいています。何よりも不動産バブル崩壊が深刻です。中国全人に匹敵する数の空き家マンションがあるそうです。かって日本が経験した失われた30年が始まっています。

 ちなみに日本はどうか。円安が続いています。いまの円安は物価高の要因になっていますが、製造業にとっては神風が吹いていると思います。ただし米国経済が冷え込み米国金利が下がると円は上昇します。 年末から来年にかけては140円台も覚悟しておく必要があります。

 三つめは環境不安が拡大していくことです。
 歴史的にみても戦争と感染症流行のあとに到来するのは環境破壊です。ウクライナ、ロシアは世界の穀物庫であり化学肥料の大量生産国です。世界的規模での収穫減で世界の食糧危機が始まりました。
 特に人口40憶人のアフリカ諸国は重大です。早急にコーヒー豆や香辛料生産から穀物生産に切り替えないと大量の餓死者を出してしまいます。熱波、干ばつ、水害も各地に起きています。
弱者に被害が加速していきます。戦争よりもはるかに大量の死者がでているのです。
世界中が混乱すればするほど、頼りになるのはものづくりです。日本はものづくりによって成長してきた国です。これからもものづくり立国を基本にしなければなりません。そのためには国や自治体を動かしていく必要があります。
 時間はかかりましたが、国がようやく動き始めました。
 全技連特別顧問の堀内のり子衆議院議員と特別相談役の田畑裕明衆議院議員のご尽力により、技能尊重支援組織が立ち上がりました。先日、6月7日参議院特別講堂において勉強会という名目で加藤勝信前厚生労働大臣が会長に就任し開催されました。当日は私も20名ほどの技能士の方々と出席し技能士の抱える課題、役割等を話してきました。
 お手元に発言内容が配布されていますので後ほどご覧いただきたいと思います。そして東京都にも動きがありました。
 一つは「匠の技祭典」が今年も8月2日から3日間、東京国際フォーラムで開催できることになりました。オリンピック開催年までという約束でしたがこういう良いものは続けようということで継続されました。来年は浜松町の会館ですが実現されます。今年のテーマは技能士の役割、貢献です。成功させましょう。
 もう一つは技能士会館(仮称:匠のプラザ)構想です。
@ 過去    博物館機能、伝承記録、書籍類保存
A 現在    道の駅、活動拠点、各職種共同事務所、体験機能
B 未来    技能継承、後継者育成、技能改革
 昨年末、産業労働局長に提案してきました。知事にも上げていただき実現されることを願っています。
  長くなりました。本日の総会が活発に進められることを祈念して私の挨拶とさせていただきます

2024.6.14東技連総会

2024.6.7参議院特別講堂